蝋燭店襲撃

一応承諾を得たので、キリル&ザインさん所のゴシックな子(※)をネタにしてみました。
(※)http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=23659573


「いらっしゃい」
蝋燭屋「らび」の店主『カルナウバ・ラビ・K・パラフィン』
通称【K】、能力は『蝋化』。
噂によれば彼女の店内で売られている商品は全て彼女の手によって姿を変えられた元人間だという。
変えられた者はさておき、個人的に彼女の持つ能力は興味深い。
故に、彼女の店に私の作品を送ることにした。
「この蝋燭、気に入った?」
おそらく20歳前半だろうか。全身黒尽くめの男は何も語らず、舐めるように商品を見つつカルナウバ、もとい【K】に視線を注ぐ。
欠けたるモノ『モーブ』は人型にして人間にあらず。
話すことも出来ず、腕や足などの人間らしい部分が欠損している――今回で言えば声が欠損している為、会話ができない。
そう、ある例外を除いては。
「……何?」
その視線に映る彼女は、ぼんやりとしつつも何処か不信感を抱いてる。
そろそろ頃合いだろう、ならば――。
『!!!』
私の合図と共にモーブが【K】の手を掴む。
「おいで、いーちゃん」
彼女はその手を払いのけ、間に何かを割りこませる
首のない蝋人形だ。いーちゃんと呼ばれた『それ』がモーブの手を弾くと、半分溶けかかっていたろうが瞬時に固まり、モーブの手のみを蝋人形に仕立て上げる。
「今日の商品はこれにしよう」
もう一体の蝋人形が現れ、追い込まれていくモーブ。
しかし、この時にはもう既に勝ちパターンに入っていたのだ。
『ソレハ ドウカナ?』
「?」
モーブが共鳴するような、まるで使い古したレコードから再生されたかのような【K】の声を発すると同時に、彼女へ飛びかかる。
「お願い」
蝋人形2体が跳びかかると、観る間に手足に蝋を引っ掛けられ、顔をも蝋まみれにされてしまう。
だが、モーブはこの程度で倒れない。蝋で固まる四肢をも物ともせず強引に【K】に掴みかかる。
「う……」
何故このような芸当ができるのか、それはモーブの『欠けた所を埋め』『埋めた能力を自身の所有とする』という変わった能力に起因する。
埋めた部分――今回で言えば『蝋化』を自分の所有物としたことで、蝋人形となった部分は観る間に融解し、新たな手足となって自由に動く。
この能力は対策されればたやすく看破されるが、このような奇襲じみた攻撃にはうってつけだ。
『ボクノコノミ ショウヒンニシヨウ』
モーブが黒いコートを広げると、そこには彼女の使役する蝋人形のように真っ白な、常に融解している蝋で構成された空間が広がる。
掴まれた箇所は見る間に真っ白に変色し、固まって自由が効かなくなる。
それだけでなく、モーブは蝋空間の中に【K】を引きずり込んでいく。
「もう、だめかな」
これも因果応報か。【K】が覚悟を決めて目をつむり、そして――。
ゴトン、と鈍い音が店内に響く。
その床には、デカリボンと帽子、それに圧されたかのようなサイドに寄ったアホ毛。
そして、ぼんやりとした表情が特徴的な少女の蝋人形が転がっていた。
「……?」
重い音と共に、【K】が目を開く。
手も足も動くし拘束されても居ない。先ほどの妙な異形も消えている。
ただ――目の前にはなぜか自身の蝋人形と、さっきまで拘束していたモーブが佇んでいる。
『コレ チョウダイ』
「……まいどあり」
【K】の蝋人形を軽く抱え、代金を支払うモーブ。
さっきと打って変わっておとなしいが、警戒して2体の蝋人形はそのまま待機させてる。
なるほど、中々いい能力だ。そろそろ戻らせるとしよう。
……その前に種明かしをしないと行けない。なぜ彼女が蝋人形になったのに、当人がピンピンしてるのか。
答えは単純だ、彼女を包んだのは単なる型取りでしか無いからだ。
――目を瞑った後、モーブは彼女の全身を蝋の監獄に閉じ込め、表面上だけ凝固させた。
型はモーブの記憶にインプットされ、開放と同時に彼女、【K】の蝋人形を形成する。
型取りとは言えど、本人からしてみれば全身を覆われたわけだし、感覚の錯誤を生んでも致し方なかろう。
もっとも、今回はモーブの顔見せが目的だ。次来たときは彼女を『欠けた存在』に変えてみせよう。
「まぁ今日の所は顔見せさ、気が向いたらちゃんと買いに来るよ」
「!」
私が一声かけると同時に、モーブはおつりも取らずに店から去っていく。
声の主を【K】が探すも、そこには彼女と、彼女に仕える蝋人形しか居なかった。
この後の続きは書いたは書いたけど、終わり部分しか書いてない尻切れトンボなので別記事に書いてます。
なんというやっつけ仕事。

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