何か良い題名があったら一つお願いします。
しろくろにっきのifです。
「……どこだここ?」
意識を取り戻した少年が辺りを見回すと、そこは刑務所のような檻の中だった。
赤髪の少年――杉下健児(すぎした・けんじ)はなぜここにつれてここにいるのか知っている。少し前に首輪をした変な大人に抱きつかれ、そのまま意識を失い――気づいたときにはこの部屋にいた。妙に肌寒いと感じて身体を確認すると、服は全て剥がされ、友人であるサン・青葉(―・あおば)ともども生まれたままの姿にされていた。
「よりによって四谷の奴に息巻いたあとってのに……おいサン、大丈夫か?」
近くで倒れている少年にも声をかける。少し唸ったのちに起き上がった彼もまた、周囲を見回して不安げな表情を見せる。
「やっぱり城奈の話、本当だったんだ……」
近くにあった布団カバーを身体に巻きつつ、サンも彼女の顔を思い出した。
2人はただの親友ではない。特殊な力――”色”を使い怪物を退ける能力者、通称『色使い』だ。
しかし、この力を知る者はいまだ少ない。それだけに、色の力を悪用しようとする者が居る――そんな話を同じ色使いの少女であり、同級生である四谷・城奈(よつや・しろな)から聞いたばかりだった。
その時、健児はいつものクセで「どんな奴だろうと俺が守ってやる」と息巻き、周囲を呆れさせていた。まさにそんな話をして、皆と別れた直後に謎の集団にさらわれたのだ。
「とにかく、ここからでる方法を考えないとな」
「ここに閉じ込めた人が居る、ってことだよね。まずはその人にあった方が」
「バカ、俺達を捕まえに来たのだから次合うときはなにされるか分からないぜ」
脅すようにサンを急かす健児に余計に怖がるサン。しかし、周囲を見回しても穴一つ見つからず、周囲は石の壁。窓には鉄格子がしっかり填まっている。
牢屋自体はそこまで狭くないものの、脱出できるような隙のない造りになっていた。
脱出できる隙はないものか――そうこう見回していると、遠くから高下駄を鳴らすような足音が聞こえ始めた。
「誰かくる?」
「みたいだな、とりあえずベッドの中に隠れるぞ」
慌ててベッドの中に潜り込む2人。カツン、カツンという音はすぐ近くまで響き――牢を開ける音と共に何者かが2人を隠していた布団を引き剥がした。
「ベッドでかくれんぼ? もう少し楽しませて欲しかったわね」
「う、うるさい。こんな所で裸にするお前らが悪いんだろ」
「いったい、何が目的でこんなことを」
毛布に包まる2人を尻目に狐耳の少女――桶季遊姫(とうい・ゆき)は見定めるように一瞥する。
「悪くない身体ね。男でなければ引き渡すのを考えてたわ」
「うるさい!変な格好して、何が目的だ?」
健児は噛みつくように狐耳の少女に言葉をぶつける。彼女の姿はレオタードとボディースーツを合わせたような異様な姿に、15cmはあろうかという高いヒールを履いていた。その姿が健児にとって気に召さなかったのか、あるいは服を剥がれて見下すように見ている遊姫が気にくわなかったのかは知ったことではなかった。ただ――自分の格好を罵らせた遊姫は、顔にかすかな怒りをみせつつ手から何かを生み出す。
「口には気をつけなさい、あなたに新しい服を与えてあげるのだから」
『行きなさい』という声と共に、透明なゲル状のボールは遊姫の手から離れ、2人に飛びかかる。驚いたサンはそのままベッドから転げ落ち、健児はベッドの上でシーツ片手に必死で抵抗する。
「クソッ、なんだこれは?」
「あまり抵抗するとシーツごと巻き込んじゃうわよ? ほら、隙だらけ」
遊姫が指を動かすと、がら空きだった脇からゲルが飛び込み、健児の身体に付着。そのままゲルは薄く身体を覆っていき、緑色に変色し始める。
「うひっ!? なんだこれ?広がってく……」
「これは拘束具を兼ねた『スウツ』。私の意思にそって着脱することができるし、こうやって着せることができる――もうお友達は着替え終えた頃かしら?」
遊姫は脇を固めていた首輪付きの奴隷に声をかけると、ベッドの奥でもがいていたサンを引っ張り上げる。
「離して! こんなの、おかしいって!!」
「おかしい? ……あら、ほんと」
遊姫がサンの姿を見て口元に手を当てる。サンにまとわりついたゲルはオレンジのスウツに形を変え、身体全体を覆っていた。しかし、驚くことにその胸元は小さく膨らみ、年相応の少女のような胸になっていた。元々中性的な顔立ちだったサンだが、身体と合わせるともはや女の子にしか見えない。
「う、うそだろ、サンだよな?」
「……うん」
首を小さく縦に振る少女と化した少年。内股気味な足は何か大切なものを失ったのかモジモジとしており、加えて背が心なしか高い――狐耳の少女と同じ高さはあろうハイヒールをサンも着用していた。
友人がこのような姿に変わったと言うことは、自ずと未来が見えてくる。そう、自分も女の身体になるという恐るべき未来。それを示すかのように健児のゲルも上半身を包みながら濃い緑色に変色していく。
「ふ、ふざけんな! 元に戻せクソ女!」
怒りのままベッドから飛び出し、色を飛ばす健児。自身の持つ”緑色”を目の前の狐少女に放つも、奴隷が色を受けたため当たることはなかった。毒の力を持つ色の力を受けた奴隷は苦しそうな表情を見せ、その場にうずくまる。
「スウツの色があなた達の持つ魔力そのものだったのね。それにしても……乱暴な子は嫌いよ」
「外したか……魔力?」
「こっちの話、それより自分の立場をわきまえたらどう? そろそろあなたの身体にも何らかの変化が起きる頃合いじゃないかしら」
遊姫が健児に声をかける。すでに彼の身体は手や胸が先に覆われ、足が覆われるのも時間の問題となっていた。
「どういうこと――うわっ!?」
健児が胸に違和感を感じるやいなや、彼の胸がむくむくと大きく膨らみ始める。サンの膨らみよりも大きくなっていく二つの山、そして変化を意ともせずスウツが全身を包むと、下半身にもむず痒い違和感を感じ始めた。
「うわ、あぁぁ……ない! なくなってる!?」
「まぁ女の子だものね。それよりずいぶん大きくなるわねぇ」
男子が下半身にあるべきものがなくなり、困惑する健児。さらに胸は手のひら大にまで膨れあがり、ぴっちりとしたスウツは豊満な彼の胸元を窮屈に押し込めていた。
しかし、まだ変化は終わらない。健児を纏っていたスウツの脚部が変化し、ヒールが形成され、視界が高くなる。まるでつま先立ちするかのような異様な感覚だけではない。彼の腰骨も女性のものに代わり、スラリと伸びた足は内股に歪められ、ふらふらと足下が揺らぎ始めた。
「う、うわわ。倒れる」
「ほら、これで完成。やっぱりないと――」
遊姫が満足げに言い放つ前に健児はバランスを崩し、床に尻餅をついた。急に高くなった背に、歪んで内股になった足に身体を支えきれなかったのだろう。
「さて、これでもう脱げない。ちょっとトラブルもあったけど別に私には関係ないしね」
「こっちには大ありだ! ここから出せ、でないとこの変な靴でお前を蹴飛ばしてやる」
転んだままヒールを無造作に向ける健児。もしスカートをはいていたら下着が丸見えであろう姿勢は、心まで女性化していないの表れでもあった。
「……へぇ、なら一つゲームをしましょう?」
「ゲーム?」
「そう、あなたが私を殴ったり蹴飛ばしたりできたら、ここから逃がしてあげる。その魔力をぶつけるのも認めるわ」
「それでいいのか? お前、ずいぶんとトロそうなのに」
健児が自信満々に言い放つも遊姫はスルーを決め込む。
「えぇ、あなたは私に危害を加えられない。そんな気も消し飛ばしてあげる……それでいいでしょ『朱音ちゃん』?」
その言葉を聞いた瞬間、健児の身体が若干震え、声に怒気がこもる。
「なんで、お前がその名前を知ってる」
「別に良いでしょ? ほら、早く立って攻撃を加えてみなさい」
「くそっ、殴ったら全部聞いてやる!」
手を地面に付き、飛び上がるように立とうとする健児。だが、意に反して足がもつれ、再び転倒する。
「いってぇ……なんだこの身体?」
「言ったはずよ、今のあなたは女の子。いつもとは違う身体に馴れないのは当然よ」
「分かってる、ならこっちはどうだ!」
続けて色を少女の顔に向けて飛ばす健児。顔に直撃するコースだったが、遊姫はこれを余裕で回避する。
「当たったら苦しい目に合いそうね。でも、そんな直線的な撃ち方じゃ鳥にも当たらないわよ」
「うるさい!」
挑発を真に受けて何発も打つ健児だが、狐耳少女はハイヒールを鳴らし、ステップを踏むかのようにかわしていく。フェイントもかけずに闇雲に打つ健児の攻撃は、遊姫にとって運動にすらならない。次第に健児の体力は尽きていき、息もあがり始める。
「いつもは、もっと打てるはずなのに……」
「あらそう。出来上がった身体で無理はしない方が良いわよ?」
「う、うるさい。絶対に一発当ててやる」
何とか立ち上がろうとしても、内股で足下がおぼつかない健児。まるで生まれたての子鹿のようにふらついている足を、遊姫は軽く引っかける。
「うわっ!?」
再び転倒する健児に対し、上から見下ろす遊姫。さらに色を打とうとする彼の細い腕をけん制するかのようにヒールをを鳴らす。
「どうしたの朱音ちゃん、立たないの?」
「…………」
まるで百歩先を見られているかのような感覚に、過去のできごとが浮かんでは蘇る。彼にとって『朱音』という名前は、倒した相手が付けた名前であり、忘れたい過去でもあった。
しかし、目の前の少女――遊姫に手も足も出ない。悔しさに震えて、今にも泣き出しそうな健児だが、少女は彼の額に足を向け――。
「泣くな」
そのままヒールを額に突き立てる。先端が健児の額に触れた途端、健児の身体には電気が流れたようなショックが走り、身体が石のように固まる。
「ひっ! か、からだがビリってした!?」
そのまま遊姫はゆっくりとかかとに力を入れ、健児を倒す。その姿はまるで、柔らかい棒を踏み倒すかのようだった。
「いくら泣こうとわめこうと、あなた達は私から逃げられないの。今だって、ヒールで踏みにじられてるのに動けないでしょ?」
「うああっ、いたい、いたいぃ!」
そのままグリグリと額に力を入れる遊姫。少年のプライドをもてあそぶかのようにスラリと伸びた少女の足は、健児の頭に痛みを与える。
「フフ、無様。だってそういう魔法をかけてるんだもの」
「な、なに、魔法?」
「そう、すんなり身体が倒れるのも、頭がすごく痛いのも、そういう魔法」
「お、あぁ……お前も、そういう奴、なんだな?」
うふふ、と含み笑いで返す遊姫。性質は違っても、恐らく同類であろう健児の歯を食いしばる姿に、加虐心が増していく。
「さぁね」
額から足を除け、今度は胸に突き立てるようにヒールを食い込ませる。大きく実った胸を張り詰めさせる緑色のスーツ、そこに遊姫のヒールが食い込み、胸に杭を突き立てられたような痛みが走る。
「ぎうっ!?」
「あは、朱音ちゃんの胸、やわらかぁい♪」
「言うなぁ! その名前で呼ぶなぁ!!」
「ごめんねぇ、ここまで胸が大きいとしないわけには行かないでしょ?」
遊姫はそう言い除けると、胸から足を除けて、健児の目の前に顔を寄せる。遊姫の足が地面に着くと、健児の身体からしびれが消え、痛みが引いていく。
「ここまで来たら、あなたの手も届くでしょ? 色だってぶつけられる」
「分かってる! 今度、こそ……」
『殴ったら解放するという』約束を信じて握られる拳。健児は目の前にいる少女の顔面にそのまま拳を入れようと振りかぶった。
しかし、不意に少女から得体の知れない恐怖が身体を走り、手が動かなくなる。
「どうしたの? あなたが憎くて憎くて仕方のない敵がここにいるのよ?」
「う……わかってる」
不敵に笑う遊姫にたいし、健児の拳は固まり、震えたまま動かない。
「分かっていない。あなたはもう、私を殴ることができない。力をぶつけることもできない」
「うそだ、さっき胸を踏んだ時になにかしただろ!」
「いいえ、なにもかけてないわ。魔法は全て解いた、身体も動くし痛みもないはず」
確かに健児の身体には痛みは残っていない。彼の身体がその事実を一番知っている。色も――ぶつけるのが怖い。
「ただ、あなたを『躾けた』だけ。奴隷らしく、主人に刃向かわないための恐怖をね、与えたの」
「しつけ……」
「そう、魔法とは違うから解けることもない。なにより手をあげないのは朱音ちゃん、あなたの意思よ」
朱音と呼ばれたものの、健児はもう何も言えなかった。確かに叩かれた瞬間、これまでに感じてきた怖さが一気に溢れかえり、スウツとは別に彼を包み込んでいた。『手をあげたら殺される』そう思えるほどの恐怖は少年1人を容易く支配していた。
健児は似たような感覚を過去に一度味わったことがある。かつて街を襲った厄災。”色鬼”と呼ばれる悪魔に操られたときに、同じような感覚を――。だが、今感じるのはその時よりも遙かに大きく、そして――。
「今、あなたはどんな気持ち? 正直に答えなさい」
「……」
「言ってみなさい。悪いようにはしないから」
悪いようにはしない。そういいつつ、目は明らかに反逆を見越したかのように殺気を帯びていた。
「……こわい」
「け、健児くん?」
強気だった健児が急にしおらしくなり、そのおかしさに、サンは思わずのぞき込もうとする。
「大人しくなさい」
「は、はい!」
遊姫はサンを一言で無力化させる。彼――サンに改めてしつけを施す必要はない。すでに言葉を告げたらサンは動いてくれる。あとは、健児を堕とすことで、連鎖的に2人は堕ちる。そう、どんな命令にも従う忠実な奴隷に仕上がる。
「あなたは私に手をあげることはもうない。私の雇い主にも手を上げることはおろか、口答えすることも許さない」
「…………」
「返事も分からないなんてかわいそうに。いい? こういうときは『はい、ご主人様』って言うの」
健児はしばらく口をつぐみ、身体を振るわせる。そして、口を開く。
「はい、ご主人様」
「そのスウツはもう言うまでもないよね?新しい身体に新しいスウツ。あなたの身体そのもの」
「はい……ご主人様」
「おちんちんもない、胸も大きな女の子。そうでしょ?『朱音ちゃん』」
「……はい、ご主人様」
『良い子』と頭を撫でる遊姫。頭を撫でられると健児の中では恐怖が消え、安堵がわき上がる。まるで飴と鞭、健児によってこの狐耳の少女の存在が何よりも絶対的に思えた。
「分かったら大人しくなさい。もうすぐ私の奴隷が、あなた達の新しい主人を連れてくるから」
「はい、ご主人さま――」
「あ、あの。その新しいご主人様って」
遊姫がサンの方を向く。何かされると思い、思わず『ひっ』と声をあげ、後ろに転げた。
「あなたはもう知ってるはずでしょ。色使いの身体に、懸賞金がかけられてるってこと」
「懸賞、お金?」
「あなた達を捕まえたら、1ヶ月なにもしなくても暮らせるぐらいのお金がもらえるの。その後どうなるかまでは知らないけど……その身体になったのはちょっとした誤算ね」
遊姫曰く、このスライム――彼女の言葉を借りれば『スウツ』は対象の身体と一体化し、洋服兼拘束具のような役割を果たすという。ここまでは話したとおりだ。
しかしこのスウツは不良品だったようで、対象の身体を女性化してしまう効果があった。もちろん元に戻す方法は彼女にすら分からないし、解くことも考えていない。
その言葉を聞いたとき、サンの中で何かが折れた音が聞こえた。もしかするとこのまま、ずっと、女の子としてこのスウツと共に暮らさなければいけないと考えると――。
「う、うぅぅ……そんな、脱ぐことができればきっと」
サンは必死に脱ごうと身体に張り付いたスウツを引っ張る。しかしいくら引っ張っても自分の身体をつかんで引っ張るような感覚と痛みが走る。
「無駄よ、このスウツは纏っているんじゃなくて、身体に染みこんでいるの。つまりあなたの身体そのもの。あなたの魔力を持ってしても剥がすことはできない」
「そんな……」
「質問はそれだけ? だったら、今度は私から良いかしら?」
悠然とサンを見下す狐少女に、サンは渋々首を縦に振る。
「そこで、大人しく今からやることをみてなさい。目をそらしたらひどい目に合わせるから」
遊姫はそう言うと、ハイヒールのつま先――トゥを健児に向ける。サンは黙ってその様子を凝視する。
「舐めて、きれいになさい」
「ぅ……」
遊姫の宣告にサンが苦々しい声を挙げると、突き刺さるようなプレッシャーが彼の身を振るわせる。遊姫がサンに視線を向けた、たったそれだけなのに。
健児は彼女の言葉に震えたまま身体を起き上がらせ、遊姫を見上げる。
「もうこの子は私の言うことを何でも聞く奴隷。この子のことはあなたがよく知ってるでしょ? この子の性格や態度。いつもどうしているかってことは」
遊姫は足先をさらに向け、促すと、健児は舌を出してつま先を舐め始める。
「んっ……ぺろ、くちゅ、ぅ……」
廊下を、道を歩いたヒール。それでも遊姫には逆らえない。
「そして、あなたは彼に勝てないという気持ちもある。どう思う? そんなこの子を、意のままに操る私の姿を見て」
「…………」
「怖い? 気分が悪い? それとも怒りたい? でも、あなたは手を出せない。手を出すだけの力もない」
『知ってるのよ、あなた達の情報は』その言葉と共につま先を離し、緑色のスウツになすりつける。唾液で照ったトゥはかすかに輝きを取り戻す。
「大丈夫、残りの子には手を出さない。……あなたがこのヒールを、その胸で拭いてくれたらね」
そのままかかとを健児に向けると、察したように健児がヒールを舐め始める。
「もっと良い手入れの仕方があるでしょ?」
遊姫が健児の口元にヒールを押しつけると、まるで催眠術にでもかかったかのように彼はヒールを口にくわえ、奥まで飲み込んでいく。
「じゅぷっ、じゅぷっ、んんんっvんぇぇ、じゅぷっvじゅぷvじゅぷっv」
ヒールをなめ回し、口内で傷つけないよう丹念に磨いていく健児の姿。その姿が遊姫の嗜虐心を満たしたのか、彼女はヒールを引き抜いては健児の口内に押し込み、満足げにほほえむ。
「驚いた? 今の彼の口はこのヒールしか受け付けない。こうやって突っ込み続ける限りずっと舌と口で磨き続けるし……このまま固めてヒール磨き器にしてあげるのも彼の為かも知れないわね」
遊姫がヒールを引き抜こうとすると、ズズゥv と下品な音を鳴らし、ヒールを口でしごいていく健児の姿。サンはさっきまで抵抗していた友人が、ここまで無様で、いやらしい姿を見せるなんて考えたくもなかった。
それなのに――現実は非情にも、最悪の姿をありありと見せつける。そして、サンは目を離すことができない。話せば同じような仕打ちを受けると、サンの頭の中では警鐘を鳴らし続けていた。
「さて、あなたが条件をのめば脅威は1つ取り除かれる。飲まなければお金に困り次第、他の子も同じような目に合わせる」
『どうする?』という言葉に合わせるように、遊姫が健児の口内ヒール磨き孔からヒールを引き抜く。よだれを引きながら『あえっv』と喘いで健児の声。口を開けたまま差し込まれるのを待ちわびる姿が、サンの抵抗心を削いでいく。
「……わかりました」
そのまま言われるがまま胸のスウツで拭いていくサン。スウツとはいえ自分の身体と変わらないせいか、固いものが辺り、よだれが付いていく感覚がダイレクトに伝わる。
「そうそう、胸で挟み込むようにするともっときれいになるわ」
その言葉に『こう、ですか?』と貧相な胸で挟み込み、少女と化したサンはヒールを磨く。抵抗なんてできるわけがない。意のままにされ、尊厳の欠片も失った健児の姿をみせられ、サンの心のどこかで『あのようになりたくない』と言う思いがよぎったのだろう。遊姫はそれすらも見透かすように足を上下に動かし、パイズリするかのように自慢のヒールを拭き上げていった。
「(恥ずかしい……でも、我慢しないとです。まだ、チャンスは残ってます!)」
胸の擦れる感触に顔をしかめるサンに、遊姫がおもむろに彼の顔をのぞき込む。
「な、なんです?」
「サン君、あなたにいいものを見せてあげる」
遊姫が指を突き出すと、身体のそこからざわつくような感覚が立ち上りはじめる。そして、首から上へとスウツが侵食を始める。
「な、なんで? む、むーっ!?」
口はふさがれ、言葉も出すことを許されなくなったサンは助けを求めるように身をよじる。その姿を見て遊姫はため息をつく。
「やっぱり君って、あきらめが悪いのね。でも……私に服従した以上、命令一つでこの通り」
全身をスウツが覆い、身体がこわばったサンはその場で静止する。表面に光沢が現れ、スウツが肌に密着するように包み込むと、そこにはパニック状態のまま時を止めた、オレンジ色の少女像が佇んでいた。
「せっかくだからあなたにも、奴隷になったらどういう態度を見せるのか見せてあげる。来なさい」
一時的にサンだったオレンジ像に視野を与える遊姫。目の前に見えるのは変わり果てた健児の姿。
『よく見なさい』その言葉に健児の身体も緑色のスウツに覆われていく。しかし、微動だにしない。遊姫を見つめたままただ呆然と、胸を張ったまま見つめ続けていた。
「口を塞ぐ前に……何か言いたいこと、ある?」
遊姫の言葉に、健児が口を開く。
「はい、ご主人様。なにもありません。わたしの身体を、ご主人様の好きなようにしてくださいv」
「完璧よ。あなたはもう私の奴隷。そこであなたの痴態を、宣言を聞いていた不完全な子も……」
健児がそばに付いていれば、すぐに堕ちる。現にサンの激しい動揺が、主人である遊姫にはハッキリと感じ取れていた。
口を塞ぎ、頭の頂点まで包み込むスウツ。そのまま密着し、光沢を帯びるとブロンズにも似た緑色の像ができあがる。その表情は発情にも、そして高揚にも似た表情のまま固まっていた。
頭の頂点からハイヒールの先まで、動くことのない金属像にも似た物体が2つ、遊姫の目を楽しませた。
こうして奴隷となった少年2人は少女に代わり、そして光沢を帯びた像へと変わった。そんな戯れに水を差すかのように、重装甲の男が牢を叩く。
「お遊びはそこまでだ。こっちは急いでるんだ」
「あら、もう少し楽しんでから引き渡そうと思ったのに」
少女2人にハイヒールを向けていたスウツの狐少女――遊姫は魔力を解除し、2人を引き渡す。
「男と聞いていたはずだが……固めたのはあんたの趣味か」
男と聞いていたはずなのに、引き渡されたのはなぜか女性。男はいぶかしげな顔で遊姫を見る。
「拘束用のスウツが不良品だったの。別に男のまま捕まえてこいって言ってないし、私は知らないから」
そう言い捨てると、賞金である小切手を受け取り、代わりに1枚の紙を投げる。
「奴隷のスウツを着脱させる呪文。どう使うかはあなた達に任せるわ」
「分かった。あとはこちらに任せてもらおう。早く去ってくれるとありがたいのだが」
「はいはい。それじゃ、また会いましょう」
そのまま奴隷を引き連れ、魔方陣を展開して去る遊姫。その場には研究員と2体の少年像が残った。
「なんて身勝手な女だ……まぁいい。研究所に運んだら解除するとしよう」
渋々と1体ずつ運んでいく武装研究員。みだらな像はトラックに積まれ、荷造りされた状態でいずこへと運ばれていく。
彼らがこの先どうなるかは分からない。
ただ一つだけ言えるのは……2人の力は徹底的に調べられ、抵抗することなく力を利用されることだろう。
いつまでかも分からない。力が解ける日まで、彼らは遊姫の奴隷なのだから。
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