『巻き込む色と鏡の中のイロクイ』サンの救助に間に合わなかった場合

これのifストーリーです。

サンが連れ去られてから数日、ついに鏡の中へ突入することになった健児、きらり、翠、そして城奈。
4人が鏡の中に入ってみると、そこはイロクイの巣窟だった。
「うわぁ……」
大量に徘徊する色とりどりのイロクイ。そしてまるで何かを包囲するように構えるイロクイ。その先にあるものは――磔にされた、ウェディングドレス姿のサンだった。お腹の部分だけが目立つように作られた扇情的なそれは、ただのウェディングドレスではないことを物語る。
「サン君! なにかされたのね!?」
「うわっ、なんだあれ」
「あれって……う、うん?」
3人は目を疑った。何が起こっているかわからなかった、しいて言えば……
「サン君のお腹が真ん丸になってる……」
そう、ベッドと十字架をかけ合わせたような装置に貼り付けられたサンの下腹部は、臨月の妊婦のように丸く膨れ上がっていた。

――

翠たちの突入前日、鏡イロクイの滋養はすでに満杯になっていた。だが、鏡イロクイはそのままでは新たな鏡に写ることができない。移動ができ、イロクイを増やせる『依代』が必要な特殊なイロクイだった。
「お前は私の依代になるのだよ。ついでに手下も産んでもらう」
「そんな……無理だよ! だって僕、男なんだよ?」
「関係ない、なぜなら――今から改造を施すのだから」
そう言うや、スカート姿のサンの下着を取り去り、手を菊紋へと伸ばしていく。違和感はなかった、するりと入った腕はそのまま腸壁に沿って這い、撫ぜていく。
「う、うぅぅっ、やだぁ……」
ある一点で撫ぜるのを辞め、こじ開けていく感覚に身体をよじるサン。まるで風船を体内で膨らまされていくような痛みにしばらく苦しんでいたが、10分もしないうちに痛みは収まっていった。

「準備は整った、あとは依代を受け入れるだけだ」
ず、と出た肉のパイプが、サンの目の前を塞ぐ。
「や、いやだ……ひぃっ!」
肉のパイプは分泌した液体をさんの尻の割れ目にこすりつけ、ずぐ、と入り込み始めた。
「あっ、あっ、あがっ」
初めて入る感触に苦しげな表情を浮かべるサン。しかし潤滑液の性もあってか、痛みは少ない。
「ひっ、ひあああああっ」
肉のパイプは何度も何度も腸壁を突き、謎の器官に刺激を与えていく。痛い。苦しい。そればかりが駆け巡り、次第にその痛みから逃れようと、脳が苦痛を快楽にすり替えていく。

ブシャッ、ブシャアアァ!!
「ああああああああああっvv」
どくっ、ドクドクッ!

新しくできた器官に染み込むように吹き付けられる大量の生命力。それを為す術なく受け止めるしか無いサンは苦痛と羞恥心で心が壊れそうだった。

だが、真の恐怖はここからだった。しぼんだ肉のパイプが抜け、しばらくするとお腹が膨れ上がっていき、何かが蠢き始めた。
「えっ、ええっ、お腹が……!」
明らかに早い。早すぎる。知識を得ているわけでもないが、それでももっと長かったはず。だが『その時』は急に来た。
「うっ、うぷっ」
お腹の中で何かが弾け、ドロ、と羊膜のようなものが垂れ落ちる、それと同時に、本人の意志に反し、産道を下り始めた。
「いやだ、やだやだ、産みたくなんか無い!」
それは新しくできた器官――すなわち『子宮』の入り口を通り抜け、腸壁を下り、菊紋をこじ開ける。どんなに我慢しても、その力は強く……。

「やだ、やだやだああああああああっ!!!」
さんの肛門から、オレンジ色の怪物がボトリとうまれおちる。赤ん坊のように鳴き声をあげず、ひたすらウロウロとさまようさまは、最初から意思があるかのようだった。

「生んじゃった、イロクイを、僕が……」
呆然としているサン。だが、それを尻目に再び襲い来る陣痛がサンを苦しめる。あと何度、同じことを繰り返せばいいのか。気持ち悪い感覚が長く続き、再び羊膜が破れた。

「(このまま続くの、なら……)」
諦めと同時に、下腹部に呪印が刻まれていく。依代となった証明と言わんばかりに彩られていく―-。

すべてを受け入れた時、さらにもう一体、イロクイが生まれ落ちた。

――

「はなせー!」
「こうもいっぱいいるんじゃどうしようもないよね……」

こうして4人は大量のイロクイに為す術もなく捕まり、鏡に閉じ込められた。だが、彼女たちが出られるのはすぐ先のことだろう。なぜなら――。

「ふふ、お腹の赤ちゃんが動いてる……そろそろ住処を増やさないと」
現在の依代であるサンはまだまだ産み足りないという様子で、愛おしくお腹をなでている。だが、ここではあまりに狭い。故に産んだイロクイを数匹おいて次の鏡に映る。それが鏡イロクイの増え方なのだ。

彼が鏡から出ていくときには、大量のイロクイを伴った百鬼夜行となることは間違いない。産めば生むごとに心は堕ち、イロクイに変わっていく。

「みんなも僕と同じ依代にしてあげる。だから、少しの間、鏡の中で待っててね」
そう告げた瞬間、サンの体がビクッと跳ね、足元から大量の液体が足をつたい流れた。
「生まれるっ、みんなの前で産んじゃうっ!ああっあああああああああああああっ!!!」
サンの肛門の内側から押し開かれるように顔を出した獣は、そのまま貼り付け台の下に落ち、着地する。その様子を、4人はただただ信じたくないと思うしかなかった。

サンはこのあと数匹産み、翠たちとともに鏡を写った。
行方不明になった小学生はまた増え、色使いも4人、この街から姿を消した。

コメント

タイトルとURLをコピーしました