ダイアモードの代償

2chの該当スレに投げ込んだもの。
若干文面が違うのは、文字制限に引っかかって途中で切れることで、何だかおかしなことになるのを避けるためです。
人形化メインだからその後は正直蛇足。
蛇足だけど「聖女は穢されてしかるべきだ」という意見も確かなのでまったり頑張りたい。


紫煙群塔ラッドシティ。
何時もは紫煙漂うこの街だが、今日だけは棘(ソーン)と血煙漂う戦場と化していた。
その中でも一際熾烈に戦い、血を撒き散らす存在が居た。
「……!」
革命聖女ゼファー、彼女はその名の通り数年前の革命を成功させ商人至上主義のラッドシティの自由化を推し量った立役者。
しかし果たしたかった夢は未だ叶わず、彼女はすべてを失うことを承知で『嗤う剣ダイアモード』と結託、この戦いの引き金ともなる万能宝石エリクシルの萌芽を誘発させた。
『!!!』
彼女の別称は『疾風のゼファー』。その身のこなしはエンドブレイカーですら捉えきれず、倒しそこねた残党はことごとく彼女の手で潰され、寸断され、断末魔と共に血煙と化していく。
「……まだ手元にエリクシルが来ない」
彼女は自身の『革命』を果たすまで歩みを止めないつもりであった。
しかし、その代償はあまりにも大きく、マスカレイドと化していくら殺めても平穏は未だ来ない。
「見つけたぞ、ゼファー!」
そして、道を違えたエンドブレイカーもまた、自身を狙ってくる。
「言ったはずです、今度会う時は戦場だって」
ゼファーがエンドブレイカーに近づく。彼女の強い妄想が生み出したイマージュ達も同じく進む。
『ヒャーヒャヒャヒャ! 久しぶりだぜエンドブレイカー!』
「黙れ!」
『はい』
粗方の勢力が敗走し、アクスヘイムで取り逃がしたダイアモードを倒す為に、そしてゼファーを救うためにとエンドブレイカーらの戦力はゼファーの陣にほぼ一極化している。
そのような状態下で、六度目の戦乱と喧騒がラッドシティを包む。
「目を覚まして!」「俺達は分かり合えないのか!?」
「なら戦って示しなさい、伝説のエンドブレイカー達でしょ!」
一進一退、イマージュが恐ろしいほどのスピードで削れれば、ゼファーの技量がエンドブレイカーを次々と打ちのめす。
ダイアモードの力を得た彼女だからこその一騎当千ぶりだが、それもエンドブレイカーの圧倒的人数の前には覆すことが出来ず、ゼファーにも次々と攻撃が当たる。
『ヒャーヒャヒャヒャ! まだまだやれるぜやるのかい?』
「革命を成し遂げるためなら、どんな物も犠牲にできるといったはず!」
『さっすがだぜゼファーちゃん! オレサマもっと頑張っちゃう』
ゼファーの裂帛に空気が震え、ソーンの濃度が増すと共に倒したはずのイマージュが次々と復活する。
今やラッドシティの大半のソーンを彼女が抱え込んでると言っても差し支えないだろう。
その中でゼファーが姿を消し、次の瞬間ジェスター率いる『カーニバル』が布陣する方面から悲鳴が聞こえる。
傷だらけだろうと逃げ落ちたマスカレイド達は逃さず、例外なく殲滅させていく。
「(傷が治ってる、意識もまだはっきりしている)」
あとはエンドブレイカーと一部残党を残すのみ。6度目の一斉攻撃をしのげばエリクシルは手元に来るはず。
そんな中での6度目の攻撃、予想通り彼らは全戦力を自身に投じてきた。
「来なさい、今度も打ち払ってエリクシルを勝ち取ってみせる!」
エンドブレイカーも後がない。生死問わず全力で攻撃するもその肌に刃は効かず、魔曲も心に響かない。
「(凄い、これが真打の力だっていうの?)」
更に力を引き出し、エンドブレイカーを打ち払う。100人居たのが50人となり、30、10と減っていく。
しかし、戦いに次ぐ戦いで疲弊した彼女の身体は、知らぬ間に限界が来ていた。
「忍法、木の葉竜巻の術!」
避けよう。頭がそう判断しつつも体が動かず、ゼファーの身体は木の葉の竜巻に巻き上げられ、切り刻まれ――そのまま彼方の地面に叩きつけられた。
「いたた…まだ、力は残ってる?」
身体を起こすと、まだ力は入る。炎の如き鎧は落下の衝撃で粉々に砕けだが、体に傷は残ってない。
ゼファーは立ち上がろうと身を起こすも――何故か立ち上がらない。
『もう残ってねーぜ? ゼファーちゃん頑張りすぎ、自分の体を見てみなよ』
どういうことか判らぬまま、ゼファーがダイアモードを握る腕を見てみると、そこにあったのは人の腕ではなく、まるで人形のような艷やかで、球体関節となった腕。
「なんで、どうして!?」
『とぼけちゃってゼファーちゃん。『革命を成し遂げるためなら、どんな物も犠牲にできるといったはず』って言ったからオレサマ超頑張ったんだぜ?
そしたらあら不思議、マスカレイドの異形化が暴走しちゃったんだよなー!』
マスカレイドの異形化は複腕や翼といった様々なバリエーションが存在し、身体の硬質化であれば一部の変わったエンドブレイカーでも使えるほどだ。
その異形化が止まらない。むしろやられた瞬間からその速度は増しゼファーですらも制御できない。
「制御できないの!?」
『ムリムリ、ゼファーちゃんさっきの一撃で身体のソーン全部ふっ飛ばしちゃったから超綺麗。マスカレイドの異形化なんて使えるわけ無いぜ』
ゼファーのバランスが崩れ、ダイアモードが支える。
既に手足や腕は硬質化し、肩も変異によって球体関節となっていく。
下半身も同じく、ダイアモードがゼファーの身体を投げ出すように動かすと両手と同じように変質してるのが見て取れる。
『ヒャーヒャヒャヒャ! 聖女サマのおまんこもこんな風に変わっちまってもったいないぜ!』
ダイアモードは柄で質素なぱんつを引きずり下ろす。
そこに現れたのは硬質化した秘裂、穴はあっても到底肉感的ではなく、何か柔らかいものを挿し込まなければ性的要素としても満たせないものに変貌している。
「く……」
その姿をゼファーにも見せつけようと動かし、秘裂を弄る。
痛みも不快感もなく、何故かカチッ、カツンッという人間の体では出すことの出来ない、気を叩くような不協和音がゼファーの胎内から響く。
『中までこのザマじゃ感じ無いだろうな、いっそのこと楽器として売りだしても――』
「止めろ!」
『ちぇっ』
侮蔑的な行為に対し、ゼファーが一喝するとダイアモードは動きを止める。
「どう転んでも聖女様の革命はここでジ・エンドだ、オレサマに対しての代償も払ってもらわないとな」
「まだ、足りないというの!?」
合体し、味方も仇として戦い続けてきた。なのにまだ足りないというのか。
ゼファーは激昂にも似た言葉を吐きつける。
『あんなもので代償とは生ぬるいなゼファー。本当は革命後悪人を呼んで、悪の巣窟にしてやろうなんて思ってたんだぜ?』
それに対して帰ってきた言葉は、あまりに残酷なもの。
最初からこの真打は自身の欲望のことしか考えてなく、ゼファーは体の良い肉鞘でしかなかったのだ。
『ひとまずこことはおさらばだ。何処かでお人形なゼファーちゃんをオマケに貰い手を探すとするか!』
打つ手がない、革命も果たせない。果ては自分の体を商品として売り叩く算段まで立てられている。
どうすることも出来ず、ゼファーは身体が変異するのを呆気に取られたかのように眺め続ける。
『ヒャーヒャヒャヒャヒャヒャ! 良い顔するねぇゼファーちゃん。オレサマ超そそっちゃったからそのままでいてくれよ』
胸や首元が変異し、もう心臓が動いているのかすらわからない。
顔を歪めようにも遅かった。もう眉ひとつぴくりとも動かず、まるで普段と通りの表情のまま動かない。
視界も自分の瞳のように紅く染まって、意識も――。
『いい夢見なよゼファーちゃん、この身体はオレサマがたっぷり有効活用してやるぜ』
ゼファーはその言葉に心が折れ、意識を手放した。
イマージュが消え、ゼファーが動かなくなった事でエンドブレイカー達は一時的に攻撃の手を止める。
喜びもつかの間、もしや勢い余って殺してしまったのだろうか
だが次の瞬間、ゼファーは上から引っ張り上げられるように立ち上がり、手足を振り回しながらエンドブレイカーの方を向く。
その動きはまるで操り人形のようで、体の至る箇所にある球体関節がそのさまを物語る。
そして目には確かな輝きがあった。まるで磨き上げたエリクシルを双眼に埋め込んだような、キラキラとした不自然な輝きが――。
『皆さんお見事、お見事デスネー! おかげでゼファーちゃんったら力使い果たしちゃって大変なことになっちゃっいましたー!』
そう言いつつ、エンドブレイカーを煽るようにパンツ姿の操りゼファー人形の手を振らせるダイアモード。当然ながら彼らにこの事態が飲み込めるはずがなかった。
『だから革命は中止ー! エリクシルはエンドブレイカーにくれてやるぜ!』
「ふざけるな!」「今日こそは仕留めてやる、ダイアモード!!」
挑発が引き金となり、ダイアモードに止めを刺すべくエンドブレイカーらが猛然と襲いかかる!
『こんなになってるのに気づけよオーイ、まぁいいや完全超えてマッハなオレサマが相手してやるぜ』
ぶつかり合う剣と剣、鍔迫り合いでゼファーと擦れ合う身体には温かみが伝わらず、まるで丹念に磨き上げた冷たい木材に触れているかのような、つるつるとした感覚だけが伝わる。
一方ダイアモードは人形と化したゼファーの身体を操り、その力を十二分に扱う。
その技量・力共に一番強いエンドブレイカーに勝り、今までのが如何にお遊びであったかのようにダイアモードは力の差を示す。
『ヒャーヒャヒャヒャ! もう飽きたからオレサマ逃げる!』
「逃がすか!」「ゼファーさんのおっぱいを返せ!」
攻勢を仕掛けるエンドブレイカーに対し、ダイアモードは人形となったゼファーを操り、渾身のレイドバスターを繰り出す!
『ギャーハハハ! これでもくらえ!』
常人なら肩が千切れるぐらいに大振りなフォーム。繰り出されるケタ違いの威力にエンドブレイカーの戦列が葦の海の如く縦一文字に割れ、道が現れる。
『またまた失礼しゃーっス!』
疾風の如き速さで切り開いた道を進むゼファー、もといダイアモード。
幾人のエンドブレイカーがその姿を追うも2人――あるいは2体の姿は見当たらず、その後出現したエリクシルの大妖精の出現によって探すことすらもままならなくなってしまった。
それから幾日後、とある辺境のオアシスで一人の冒険商人が身を休めていた。
「商品は全然手に入らないし、財宝のアテは外れるし……トホホ」
ひょろ長く、犬ナイフのペッポにその体格が似てなくもない冒険商人は失意のままとぼとぼと支度を始める。
財宝のあてが外れた挙句、巨獣に散々追い回された彼の食料は底をつき、城塞都市への帰還を余儀なくされていたのである。
今から出て夕方には最寄りの城塞都市に着くだろう。夜になればランドホエールなどの巨獣が怖い、急いで出発しないと。
そんな彼の目に人影が映る、一人旅にしては荷物も少ないが――よく見るとそれは人ではなく人形、しかもやたらと禍々しい形の剣を持った、それは――。
『ヒャヒャヒャ! 気弱そうな旦那、儲かってますか?』
「しゃ、しゃべったぁ!?」
思わず腰を抜かす冒険商人。だが、よく耳をすませると声の主は人形ではなく、刀身から聞こえてくる。
彼は腰を抜かしつつもしゃべる剣、もといダイアモードを見る冒険商人。
まさか、これは――。
「お前、もしや噂で聞くジュウゾウの真打だよな? この人形は一体?」
『お目が高いね旦那! こいつは正真正銘、ラッドシティの革命聖女ゼファーちゃんさ。もっとも力を使いすぎて今となってはこのザマだけどな!』
這いつくばるように近くに寄った冒険商人が品定めをするようにダイアモードとゼファーを見る。なるほど、御姿こそ綺麗になっているが、その容姿は噂通り……いや、人形となったことで汚れはすれど朽ちることなく、未だ綺麗なままである。
『どうだい旦那、冒険商人としてハクを上げたいんだろ? 今のオレッチ超お買い得だと思いますぜ、しかもタダ!』
ダイアモードの言葉に冒険商人が息を呑む。『ただより高いものはない』などという格言が、この真打の前ではカスに見える。
『どうする? どうするどうする? オレサマ別の相手でもいいんだぜ』
「いや買った、お前は今日から俺の所有物だ」
ならば決断だ、買われる前にこっちが買ってやるまでだ。
『ヒャヒャヒャヒャヒャ! よろしく頼むぜ旦那、あいや相棒の方がイイっすか? それとも頭領?』
「旦那でいい、何だか運が向いてきた気分だ!」
こうして、男は唯一の商品である嗤う剣ダイアモードと人形と化したゼファーを背中に担いで辺境を後にする。
彼の名声はその後急騰し、同じく冒険商人の大御所こと鮫剣のリリアナの耳にも届くこととなる。
彼女が目にしたものは性格が一変した青年。視えるものが見れば人目でマスカレイドだと判るだろう。
「……変わったわね、アンタ」
「真打を手に入れたもんでね姐さん、あと、これも!」
そこに現れたのは、透明なケースの中に入れられて展示されている、変わり果てたゼファーの姿。
ワックスで磨かれて艶やかな肌、ボサボサの金髪、光が当たらずハイライトの無い深紅の瞳。
球体関節を隠す装束はなく、首輪と足輪を付けられて犬みたいに四つん這いにされている。
極めつけは『革命聖女ゼファーの末路』と書かれた看板。
まさに、貴族の目を愉しませる見世物という他に言葉がなかった。
「あんた、これ何処で手に入れたんだい!」
「さぁ、これは非売品だから言えないな。あんたに最初に見せたかった」
それは功績を示したい彼の慢心がマスカレイドと化したことによって増幅された表れ。
その元凶たる存在が、青年の足元で減らず口を叩く。
『欲しければオレサマとリベンジして略奪愛しちゃうかい? ゼファーちゃんなんかより断然』
「黙りな!」
『へいへい』
癪だが、ダイアモードの言うとおり勝ち目はないに等しく、お金は命では買えない以上、無理な戦いは出来ない。
「どうせここを根城にしてんでしょ、今度会った時はそしてその子を取り戻すからね!」
「またのご来店お待ちしてまーッス! ヒャーヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
ならば力を借りる他にない、嗤うダイアモードを背に、リリアナは商館から退散する。
「(力を借りるわよ、エンドブレイカー!)」
向かう先はラッドシティ、エンドブレイカーが拠点とする城塞都市。
ゼファーを巡る新たなる戦いは、今幕を開けようとしていた。

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