闇水晶

最近書いてなかったので古いのに手直しを加えて出してみる。

「リア充みっけ!」

 

少女の声が聞こえた後、那波は反応を見せることもなく、生きているという感じすら見せず真っ黒に変色してしまった。

「なな、み……?」

「あ-、思った以上に脆かったか。あとお気の毒様だけど、ななみって子はもう戻らないよ」

 

黒水晶となり、たたずんでいる那波だったもの。人間界では希少さゆえに高価な鉱石でもある黒水晶。しかし、これはただの黒水晶ではない。人間の怨念が蓄積された『闇水晶』と呼ばれる呪術品。いわば呪いの触媒だ。

作れば物好きが高く買ってくれるし、恨みを持った相手を殺したいときにも使える。問題は闇水晶に含まれる純度。これが高くないと良い値で売れないのだ。

 

水晶像がカタカタと震えだすと、石を叩きつけたかのような音とともに、肩から黒水晶が勢い良く伸びる。さらに棘のような水晶が体の至るところから生え、人間らしい原型を留めていた頭も、ひと塊になるかのように水晶が伸びていく。

「あー、あぁ……」

そして、バキッと言う鈍い音と共に那波の顔半分から大きな水晶の塊が生え、顔の原型すら残さず、那波だったものは黒水晶の塊へと変わった。

 

その姿に春人は思わず「ひっ」と声を上げ、アミは面倒そうな顔をする。

「君はこの姿を見てもう少し耐えてよね。おんなじにはなりたくはないっしょ」

那波の姿は失敗作である。売れるには売れるが加工が面倒な上に人工の黒水晶と間違われる程度の輝度しかなく、おまけに怨念が噴出しきっているため呪術品としての価値は皆無。

だからこそ、アミは春人の様子をうかがい、あらゆる苦痛を与える。この少年は恐らく、さっきの変異でかなりの恐怖と怨念を抱いたに違いない。あとひと押しが欲しい。

 

春人のズボンに手を入れて弄るアミ。その手は次第に凹凸を見出し、奥に進めていく。

「な、何を――」

「大丈夫大丈夫。あ、あったあった」

 

言葉の後パキン! と快い音が響く。

「ぁ……」

春人の声が急に弱く、腹に鉄拳を受けたかのような曇った声が漏れ出す。

「あーバレるよね、泣いちゃいたいよね?いいよ、泣いても」

「あ、あぁ、うあああああ……」

アミの声がトドメになったかのように、少年も黒水晶に変わっていく。

アミがもぎ取った小ぶりな水晶――春人のおちんちんだった水晶を丹念に砕くたびに、黒水晶の輝きはいっそう増していく。

少年の陰茎水晶は酒肴品として欲しがる魔物もそこそこいるが、粉でもそれなりに売れるのでまぁ良しとする。

 

輝きだけをみれば彼女よりもはるかに価値は上。売れば当分の間は何もせずに暮らしていけるだろう。

 

「さて、これを削り出さないと。このままじゃ運びきれないしね」

そう言うや、取り出したノミを首元に入れる。カツン、という心地よい音と共に周囲に薄気味悪い殺気が渦巻きだす。

「これはこれは。常人だったら発狂ものの怨念だけど私はへーき、むしろ心地良いぐらいよ」

首、腕、足とバラバラに分け、袋にしまうアミ。いったいどれほどの値になるのか。見当もつかない。

「さてさて、お馬鹿な人間に売り込みましょっと」

細かく分けた黒水晶の入った袋を虚空に放り投げ、アミもぴょんと跳ねて姿を消す。

 

これがのちに続く『死を呼ぶ闇水晶事件』の始まりだと知るものは、まだいない。

 

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