魔法少女翔子第XX話『翔子の危機!』

そう言えばPixivだけにしかアップしていなかったので。
トラス帝国ネタは本来この子らを動かすためのスペースでしたが、いつの間にかクロスワールドなことになっていた。
どういうことだ。


『トラス帝国だ!』その叫びが発端となり、周囲に悲鳴と破壊音が響き渡る。
突如として町中に現れたのは全長3mはあろうかという巨大なロボット。その巨大な足が車をたやすく踏み潰していた。
ロボの周りには戦闘員らしき黒タイツに”T”が書かれている戦闘員が守るように構えており、うち1人は誘導ミスか怒られている真っ最中だ。
その逆サイド――左側にいた戦闘員がロボの無線を使い、声高に宣言する。
「その通り! 我々はトラス帝国、降伏すればキレイに飾る権利を与えよう!」
しかし、そんな勧告もパニックに陥った一般市民の前には届かない。
「……誰も相手しないトラ!」
「ええい、警察が来る前に固めるトラ。トランスフォーアーマー、石化ガス用意!」
両腕を伸ばした後、落下する腕。そしてむき出しとなった噴射口からは排気ガスのような黒い煙がぶすぶすと吹き出す。
「排気よーし、換気よーし」
「吹け!」
ファンの轟音とともに黒煙が吹き上がり、逃げ怯える一般市民を次々と捉え、飲み込んでいく。
逆流することなくガスは建物や車、人々を飲み込み、灰色の石に変えていった。
命乞いをする人や車から脱出しようとした人。今まさに逃げようとする人もまた、ガスに飲まれて石の彫像となり、その場に留まった。
「ガスやめ! 回収急げ、気をつけろ!」
『トラー!』の掛け声1つで重厚なスーツとガスマスクを纏った戦闘員が、石化した人々を丁寧に回収していく。
それを止めるものは、誰一人居なかった。
彼らはトラス帝国の戦闘員、通称『トラトラ』である。
トラス帝国は数年前から地球侵略を宣言し、このように人々を石などの物質に変えながら回収している侵略者だ。
ただし、トラス帝国は”人々を変化させること”を除けば直接的な被害は出していない。仮に出しても修復してくれることすらある。
では何が目的か。固めた対象が持つ”実在力(エナジー)”である。
それはトラス帝国人にとって、エナジーこそがエネルギー源であり、通貨となり得る存在。壊すのは当然のこと、ヒビ1つでもエナジーは大きく損なわれてしまう。そうなっては給与どころか罰金もの。これを防ぐため、石化した生物の回収は特殊な保護スーツを装備した『回収班』の仕事になる。
美しい彫像はエナジーが高く価値もある。回収スーツを着たトラトラは石像の全身を軽く磨き、梱包。そして輸送車に手際よく詰めていった。
「急げ急げ、奴が来るぞ!」
「隊長、もう近くまで来てますトラ!」
「何だと、どっちの方向――」
隊長格のトラトラが周囲を見回した瞬間、”T”が書かれたタイツ頭が歪み、横殴りにふっとばされた。
「おびゃぁ!?」
そのまま水面を跳ねる石のように2度、3度と頭を地面に叩きつけられたトラトラは、そのまま動かなくなる。
「街の人達を返してもらうよ、トラス帝国! 魔法少女翔子、推参!」
そう宣言するのは制服姿の少女。その手にはトラトラを吹き飛ばしたばかりの刺々しい鉄金棒が握られていた。
『悪あれば正義あり』。
トラス帝国の侵略開始からしばらくし、地球を護るべき”パワー”を受けた少年少女が武器を持ち、帝国に挑んでいった。
あるものは巨大化した人形とともに戦い、またあるものはオーパーツを使って果敢に挑んでいく姿は『魔法少女(少年)』とも呼ばれていた。
志多良木・翔子(したらぎ・しょうこ)もその一人。彼女は自然の力を得て肉体を強化し、獲物を精製する――そんな勇敢な魔法少女として名が知れていた。
「ま、魔法少女、ショウコ!?」
「ぐ……奴は馬鹿だが、あの怪力は手強いぞ」
隊長格のトラトラが頭を抑えてうずくまる。スーツの持つ衝撃を逃がす構造がなければ、今頃頭は潰れていただろう。
「誰がバカだ! 早く返さないと全員ぶちのめすからね」
「誰が返すか、隊長が復活するまで時間稼ぎだ!」
トラトラが一斉に銃を構え、光線を発射する。
「そのぐらいならジャンプで!」
高くジャンプし、光線を避ける翔子。なびく赤紫のロングヘアーとは対照的に、平坦な胸は揺れることを知らない。
しかし、少々高すぎたか。ビルの窓からは石像となった人が不安な顔のまま固まっているのが見えた。
「(ここからどうする、獲物を投げて一か八か?)」
次の行動を考える翔子。しかし早かったのは敵のほうだった。
「今だ、ファン逆回転と共に装甲展開!」
「了解トラ、急げ急げ!」
両手を引き上げていた戦闘員が急いでアーマーにロープを引っ掛け、左右に引っ張る。
「させない! アースバットー・スローイング!」
獲物の金棒を高々と掲げ、投げようとする翔子。狙うはもちろんロボットの胸部装甲と、作業中の戦闘員!
「せーの、トーラ!」
だが既に遅し。重たい金属音とともに左右の装甲が観音開きとなり、装甲が開く。
内部は虚空、しかし吸引力はさらに強まり、翔子の体は見る間に吸い寄せられていく。
「な、わわわ。吸い込まれる!?」
掲げた金棒のせいで空中でひっくり返り、そのまま翔子はロボの中にその身を投げ込んでしまった。
「やったトラ、魔法少女をとらえたトラ!」
「いいやまだだ。装甲を閉じ、樹脂を注入。急げよ!」
指示を受け、素早く閉じられる胸部装甲。これで翔子はトランスフォーアーマーの中に閉じ込められることとなった。
「これはちょっと、まずいかなっと!」
翔子の背後から差す光が消え、ぶよぶよとした妙な空間に、無数のファンが唸りを上げている。
その1つで有る大型ファンを蹴り壊そうとするも、前方にはゴムのように弾力がある保護ネットが張られていて壊せそうにない。
「壊せないか。なら内側から――うわわっ!?」
正面を向き、胸部装甲を叩こうとすれば大型ファンが動きを阻害する。
慌てて足をふんばろうにも、流し込まれている樹脂のせいで足を握られているかのように動かない。
「これで、これさえ、ぶつければ……っ、しまった。これも固まってる」
金棒を引き上げようにも固まったまま。そして透明な液体は下から上に引き上げるかのように翔子を包みこむ。
「ま、まず――」
口を開いたまま翔子の全身は液体に飲まれ、まばたき1つ動かせなくなってしまった。
液体はゆっくりと流れを作り、気泡を外に送り出していく。
このアーマーの中には最初から人など入っていなかった。
パイロットを攻撃しようと仕掛けるものを逆に閉じ込め、固めてしまうというトラップも兼ねた侵略兵器だったのだ。
そのようなこととも知らず、翔子を包んだ液体は急速に硬化し、それに続くかのように鎧の中で加工音が幾重にも鳴り響いた。
「加工処理完了トラ!」
「装甲を展開せよ」
再びトラトラによって左右の装甲が開かれる。すると、そこには虚空ではなく、巨大な樹脂クリスタルが鎮座していた。
カッティングされたクリスタルの中には、金棒を両手掴んだまま唖然とする翔子の姿。
中途半端に金棒と正面を向いているのは惜しいものだが、魔法少女を封じた樹脂は非常に価値が高い。
陽の光にさらされ、縮小することで内部の密度も上がり、さらに救出が困難になる。
もちろん一般人に使えば窒息死は免れない。これも魔法少女の持つ耐久力がなせる封印方法だ。
「よーし引き上げるぞ。清算したら盛大に打ち上げだ!」
「さすが隊長、最高トラ!」
「盛り上がってるけどさー、誰か忘れてない?」
「だ、誰トラ!?」
盛り上がりに水を差すように告げる少女の声、そこにいたのはオリーブの髪色をした今風の女子高生。
だが、その手には禍々しく曲がった矛が握られていた。
「ざまぁ無いけどさ、助けなくちゃいけないんだよね」
相対する戦闘員と謎の少女、そしてトランスフォーアーマー。
果たしてこの少女は何者なのか。そして、鎧の中に囚われられた翔子の運命やいかに!
続く。
次回予告!
ライバル魔法少女『大道寺・つなみ』によって救出された翔子は研究施設に運び込まれる。
そこで待っていたのは、彼女の2人の師である瑞江。彼女の力を持ってしてもこの樹脂は容易く砕けないらしい。
残る手段は彼女に力を与えた大地の化身『槌巫女』の力を借りること。
しかし、その道中待ち受けていたのは改良を加えられた『トランスフォーアーマーMk-2』だった!
次回『復活の翔子』。晒し者にされても待て!

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