にじよめちゃん石化にチャレンジする

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エイシスが石化を推すってぇことは、にじよめちゃんが石化するのも当然の道理だと思うの。
な作品。ちょっとリョナ風味で短いかもしれない。

「石化を体験してみないか、だと?」
にじよめちゃんは言葉を疑った。確かに株式会社エイシス(にじよめちゃんの親)は最近石化に対してやけにご執着だ。
現ににじよめちゃんもインタビューで紹介しているぐらいにマストバイな性癖。だが試したことは一度もなかった。
「試してみないことには言葉に正当性がないでしょう」
「一理ある」
そんな訳でこの仮面をかぶった怪しい男は石化の魔法が使えるらしい。使えるのであれば。
「それじゃ行きますよー、好きなポーズがあれば今のうちにどうぞ」
にじよめちゃんは『ならば』と胸を張り、天を仰ぐようなポーズを取った。変にこびるよりもこの方が格好がつくーーと思ったのかもしれない。
「無い胸張ってもなぁ、じゃぁ表面からささっと」
「おい、今聞き捨てならないことをーー」
にじよめちゃんが反論しかえそうとしたとき、全身が違和感を覚える。しびれると言うより、強ばるという感覚。全身を引っ張られるような一撃はにじよめちゃんの言葉を止めた。
「順調順調、無駄に大きな身体をしているので少し時間はかかりますが、立派な石像にして見せましょう」
「こ、この……」
「おっと、下手に動くと手足が砕けますよ。大きい分重量も相当なものですし」
すでににじよめちゃんの手足は色を変え、石になっている。単なる少女であればまだ抵抗できる範疇だが、にじよめちゃんは215cmもある巨躯の持ち主。ちょっと動こうとすれば石となった自らの重さに耐えきれず、自壊すらあり得る。
「(なるほど、これが石化の醍醐味……なのか?)」
これまで幾度と修羅場を超えてきた(だろう)にじよめちゃんだが、このような恐怖は初めてだ。確かにこれはニッチだ。ニッチだが悪くない。二の腕、太もも、そして下半身に至るまで固まっていき、動かせないという感覚は、拘束にも近い。
「さて、ここで残念なお知らせです」
「なに?」
「実は……私はあなたをこのまま石にしておく必要があるのです」
はぁ?とにじよめちゃんは心の中で思った。何か恨まれる相手はいない……いないはずだが、このまま石になってはにじよめちゃんのシンボルが単なる石像にクラスチェンジしてしまうではないか。
「もうわかったから戻せ」
「解りました、はいっ!」
これで一安心。そう思ったにじよめちゃんの時を、男は一瞬にして止めた。残った全魔力をにじよめちゃんの全身に注ぎ込み、炸裂させたのだ。
今、彼の目の前にあるのはにじよめちゃんの石像……というべきか。生きているとは思えないが、生きているような生々しさ、つややかさえある。
威圧するかのような巨躯にすべてをはじき返す意思を有したかのような胸。反してふわりとした羽と服。そして幾度の修羅場をくぐったであろう濁った瞳は、石になったことも相まって半ば溶け込んでしまっている。
「ふぅ、疲れた。これで依頼はおしまいです」
ピシ、ピシ……。
「本当ならこっちがいくらか払ってもらいたいぐらいですけど、まぁにじよめちゃんも最後の最後で良い思い出ができたでしょう」
ピキキ、ピシッ!
「後はエイシスに例の新マスコットをプレゼンすればーーおや」
男が振り向いた瞬間、岩盤が崩落するような音とともに男の意識が途切れた。そして、次に目覚めたとき、そこにあったのはあまりに巨大な、にじよめちゃんだった。
「依頼と言ったな、新キャラのプレゼント言ったな」
「おまえ、どこの農奴だ」
足下にはにじよめちゃんだっただろう岩の塊、そして目の前にはにじよめちゃんの顔。おそらく、たぶん身長は215mーーなのだろうか。
子犬のように首を横に振る男。余談だが農奴とは各会社に所属する奴隷を指すにじよめちゃんの言である。奴隷とはいうも、所属の変更は許されているので農奴というわけだ。
「な、なぜ。なんで、元に、なんで、こんなに大きく……」
「にじよめちゃんは概念だからな。誠意無き怒りがここまで大きくした」
そう、誠意だ。にじよめちゃんは誠意なき者に容赦をしない。
「このままひねり潰してやろうか」
「い、いやだ! 助けて!」
「どうすれば助かると思う?」
「えっ、どうすれば……」
「工夫しろ」
問答している間にも、つまんでいるにじよめちゃんの指は圧力を強まっていく。
このまま、本当に握りつぶすつもりなのだろうか。死の恐怖が襲いかかる。
「無いのか、ないなら願望でも良いぞ。それが誠意につながる」
「願望、願望……ひぎぃぃっ!!」
男はひねり出そうとするも、にじよめちゃんの物理的誠意(圧力)につぶされかかってままに考えられない。余裕はすでに無い、どうすればいい。
そんなとき、ひらめいた、ひらめいてしまった。
「わっ、私はーー」
男は、口を開いた。
数日後、株式会社エイシスの一角に奇妙な石像が建っていた。
フードを纏った少女のような、少年のような顔立ちの石像。そこに「裏切り農奴」「あなたの誠意をぶっかけてください♪」などの落書きが細い太ももや顔に施され、首には看板も施されていた
『にじよめちゃん、石化の勉強中。
      http://www.nijiyome.com 』
「石化について学べたから、かなり温情を加えた。次はない」
にじよめちゃんは満足そうに像を見て、立ち去る。
『死ぬ前に男の娘になって、徹底的にさらし者にされてから死にたい』という、男の願望を叶えたのだから。
ちなみにこの農奴はにじよめちゃんの気が向いたら石化と男の娘化を解除し、エイシスの農奴として迎え入れる手はずになっている。
「さて、今日も色々するか」
そしてにじよめちゃんは、今日も変わらずユーザーに誠意を求めるのだった。

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