メディナさんのせいでうちの子がゾンビになってしまった話

ある日メディナさんは『人をゾンビにする薬』なるものを手に入れた。
「それをうっかり排水口に流したら大変なことになってしまいましたの」

この導入からもお察しのとおり、今や帆布市は顔色の悪い人々――濁さずに言うとゾンビで溢れかえっていた。薬によって生命力を失い、邪悪な力に転換したことで人々は理性なく動き、時には共食いするという有様だ。

しかし、一部の子どもたちには、また別の症状が見られていた……。

「キャハハハh、なのね、ねねね!!!」
「うぅぅ……シロナ。元気すぎる……」
赤の色を有していた城奈は邪悪なエネルギーになったことで日夜発狂状態となり、さんの目を盗んでは他のゾンビをバラバラにするという椿事を繰り返していた。
それを止めようとするサンだが、身体と元の生命力が合わなかったせいか、昼間は動けないという有様になっていた。

「うへへへ、だいじょうぶなのなのね。サンくんもー、もっと血を取り込めばげんきになるのななねね」
「そんなことしたって、うぷっ、んんっ、んぐっ!?」
押し倒され、強引に口づけを受けては血肉を飲まされるサン。ゾンビになってここ数日はこの繰り返しばかりだった。

「うぷっ、オォォォォオ!!!!」
「ヒィィィ!!」
一方健児は街に繰り出しては人々に緑の色――だったものを吹き付けていた。彼なりに治そうという思いが形になったものだが、イロがどこからでてるかというと、口からである。
「おろろおろろろぉおぉぉぉ!!!」

非常に見映えが悪く、スプラッタ。なおかつこのゲロを浴びるとゾンビはなおさら元気になる。なにせ邪悪な生命力になっているのだから。

「…………」
ところ変わって布津之神社。今となってはゾンビの一大拠点になっているが、ここには『腐肉様』が祀られている。
どう見ても腐った肉だが、意思があり、祟りを撒き散らす。この元『色神様(零無)』がゾンビになったものが『腐肉様』として紫亜によって祀られているのだ。

邪悪な気の満ちるこの神社では近寄るだけで正気を失い、あっという間に取り囲まれる。そんな場所に藍と真畔、そして紫亜はこもりきっていた。

「崇めなさい、崇めなさい、神様を、崇めよ」
「アガメヨ、アガメヨ、アガメヨ……」

今も神社では腐肉様を崇める声々が止まない。

そして最後の拠点、それが六宮家だ。ここには強大な力を持つゾンビが居座っているという。
「すーちゃんすーちゃん、何して遊ぶ?」
「今は何もしたくない」
元黒の色使いである翠は違和感なくゾンビになった、顔色悪く、しかしこれまでと変わらない。問題はきらりの方だ。ゾンビ化した時は悶え苦しみ、消滅するかと思われていた。しかし――

「じゃぁすーちゃんの色ちょうだい。あー、もう色じゃなくてなんだろう、えーと」
「なんでもいいよ、はい」

ミチミチィ、ブツッ!!

そういい、翠は力任せに親指を引きちぎり、きらりに渡した。
このように、血肉を渡してきらりに餌付けすることで、きらりはゾンビとして新たな生を得た。

「もぐもぐ、ねぇ、色が戻ったらもっといっぱい欲しい。腕でもいいし身体まるごとでも良いでしょ」
「そんなに食べられたら死んでしまうから」
「大丈夫、きらりが元に戻すから。それにもうなんだか、戦えそうな気もするし」

いまやきらりの身体は白と黒の邪悪な生命力に満ち溢れている、混沌なる存在とかしていた。
強大な力と混沌とした強大なる力。2体のゾンビは己の置かれた状況など顧みず、ひたすらグダグダと時間を潰しあった。

学校も宿題も、何もない。未来もない。
そんな街に生きる死者の群れ。

「まぁこんなオチもアリじゃないですの?」
メディナはそういい、ゾンビに食われないうちに別の平行線へと逃げ込んだ。

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