城奈のバレンタインチョコレート

「あれ、ここは……? なんだか甘ったるい匂いがす……ええっ!?」
城奈が意識を取り戻すと、彼女は全裸のままロープで宙吊りにされていた。
「何が起こってるのか状況が飲めないのね、一体誰が――」
そういった途端、ロープがはらりと解け、城奈の体が重力に従い、落下していく。
落ちる先はもちろん、湯気の上がった液状のチョコが入っている寸胴の中。

「あああああああっ!!!? あついっ、あついいぃぃ!」
あまりの熱さに絶叫する城奈。しかし、それも数秒もすると熱さを感じなくなる。
「痛さがない、というかまさか……」
城奈が腕をあげようとするも上がらない。首をなんとか下に向けて確認すると、腕や胸はチョコ色に染まっていた。
「い、いやなのね! チョコなんかになりたくない! 城奈はどちらかというと、チョコをあげる側なのに!」
しかし、体に絡んだチョコはあっという間に首や顔を侵食し、城奈の希望すら打ち砕かんとチョコに変えていく。
「た、たすけ……」
城奈の懇願も虚しく、少女の体は心までチョコと化してしまう。変化完了を悟ったかのように、チョコ城奈の体は宙に浮き、寸胴から引き上げられた。

しばらくチョコと化した城奈の体は浮いていたが、チョコ寸胴が入れ替えられ、今度は空の鍋の中に入れられる。
鍋の下にはさらに一回り大きな鍋があり、湯が入っている――いわゆる湯煎と呼ばれる状態になっていた。
湯煎とは、チョコレートのような糖分や油分で構成されたモノを焦げないように融解する手法。その意味の通り、チョコ城奈の身体は徐々に解けていく。
「(あ、熱い。解けて、意識が消えてくのね……)」
身体がぐんにゃりと折れ曲がり、背中から徐々に解け、顔や髪も液状になっていく。チョコ城奈にかすかに残っていた意識すらも解けていく。
「(もう、だめなのね……)」
城奈が意識を手放すとほぼ同時に、城奈だったチョコは人間だった原型が崩れ、半液状のチョコの山と化した。

しばらくして湯煎が完了し、やや多いぐらいの量の液状チョコが完成する。これが元少女だったとは誰も思わないだろう。
湯の入った鍋からあげられた液体チョコ入り鍋は、そのまま宙に浮き、今度は様々な形をした型の中に移される。
ドロドロと流れる液体チョコは型を埋めるように溜まっていき、満タンになったら今度は金属トレイに変えられ、鍋のチョコがなくなるまで続く。

巨大なゴムへらも用いられつつ徹底的に別容器に移された液体チョコは、冷蔵庫へと飛んでいき、そのまま冷やされる。
そこからどれだけの時間が経ったかわからないが――しばらくすると冷蔵庫に近寄る人影がいた。
「うーん、まぁまぁな出来ですね。多分美味しいでしょう」

褐色肌に緑の髪。メイド服ではなくジャージ姿なのはプライベートだからか、それとも手を抜いてるからか。
変化の魔女『メディナ』は冷蔵庫から取り出し、金属トレイを用意して型からチョコを取り出す。
「こっちは問題なし、余った分は……こうしておきますか」
そういい、チョコの固まった金属トレイにピックを突き立てるメディナ。突き立てられたチョコは無残に砕け、四方八方に亀裂を残す。
「これを荒く砕いて完成なのね、おっとつい口ぐせが乗り移っちゃいました」
金属トレイのチョコをバキバキに砕き、ビニールに入れ、封をする。
一方、型に入っていたハートやダイヤの形をしたチョコはちゃんとした色袋の中に入れて、封をした。

「これで完成ですね。まぁ特にあげる相手もいませんが……そうですね、彼氏っぽい人にでも上げましょうか」
そう言いつつ、メディナは上着をまとって外に出向く。

「ん? あなたにはなにもないのかって? そこにあるじゃないですか、砕いたチョコ。それはそれで美味しいですよ?
 まぁ美しい形なんて意味を成さないものというのを、食べつつ噛みしめることですね。それではハッピーバレンタイン」

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