奔放な色使いと黒と紫の苗床~BAD END~

「うぅっ、ううぅっ」
「あはは、また、またうまれるうぅぅ」
「ふふふ、でもそろそろ生命力も尽きかけかしら?」
 肌も髪も真っ白になり、目の色素も落ち、アルビノのようになっている2人。その割れ目からは大人の頭ほどある白い果実がメリメリと産み出され、再び大きくなっていく。
 おそらく零無が来るまでの間、何個も何個も生み出され、生命力を吸われ、生み出されていたのだろう。しかし、すでに生命力が少なくなり、イロクイ人間も苦い顔をしている、。
「仕方ないわね、そろそろこの種を使いましょう。この種は片方には私と同じ遺伝子が入っていて、もう片方には肉体を果肉にする力がこもってるの」
 手にしたのは赤い種子と黒い種子、これまでと違って禍々しい力が弱っている翠と真畔にもわかり、体が無意識のうちに震える。
「……」
 このまま放置し、ギリギリで助ければ反省の度合いも強まるだろう。しかし、それ以上に不快と、焦りが最終的に零無の体を動かした。

「さて、植え付けましょうか。長い付き合いもこれでおしまい。次の苗床を見つけてこないと」
 矢のように身を引き絞る零無の体。その身はイロクイ人間の一声とともに放たれた。

「さて、まずはポニーテールの子から――の前に」
イロクイ人間は指を鳴らす。すると零無の不可視の壁が現れ、ゲームのバグでも起きたかのように姿がぶれ始めた。
「いくら姿が見えてなくてもさっきでバレバレなのよ色鬼さん。もうあなたが私を食べる時代は終わり。そこでずっとハマってなさい」
その言葉に口をぼんやり開ける2人。助けが来ていたのに気づかなかっただけでなく、目の前で希望が摘み取られた。そのショックに心が耐えきれなかったのだろう。
イロクイ人間は2人の様子に特に感慨も抱かず、真畔の下腹部に黒い種子を埋め込む。すると、黒い種子が真畔の体を侵食していき、侵食された場所が黒いからに覆われる
「あ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
発狂じみた断末魔を上げる真畔。下腹部に埋め込まれた種子はあっという間に体を覆い、口をふさぎ、そして全身は黒い種子と同じ色に変わると、人間の名残であった体の凹凸も消えていった。

「…………」
「はい、人間果実の完成」
そう言い、黒い果皮の頂点を腕でむしり取るイロクイ人間、そこにはまだできたばかりの真っ白な果肉がプルプルと震えており、ほのかな香りも漂っている。
イロクイ人間が果肉をちぎって食し、空洞に溜まっている果汁を飲む、そんな目の前で行われている光景が翠には受け入れ難かった。

続けて赤い種子を埋め込まれた翠。しばらくは変化がなかったが、しばらくするとみ趣旨が脈動し始める。まるで心臓が2つあるかのような感覚に驚きつつ、体はこわばったように動けない
「……!?」
しばらくすると足が変化し始めた。2本の足が根のように4本、8本と裂け、その先端が気胞のように膨らみ始めた。
「ぐ、が、アァァ……!」
真っ白だった肌は緑色に変わり、目も血の色が変わったかのように濃い緑色に変色していく。
「か、体が……寒い」
「大丈夫、今はまだ血が通ってないだけだから」
その言葉に呼応するかのように、翠を縛っていたツタガセから、腕から入り込み、脈動し始める。止まっていた血流――いや、体液がイロクイ人間と共有される。
「これであなたは私のモノ、体液を通して種が送られ、果実や種子を作るのよ」
全身が脈動し、足の気胞、下腹部が膨らみ始める。足の気胞からは数々の種子が実り、膨らんだ下腹部には翠達を苗床にした果実の種が詰まった別の果実が作られ始める
「もう人間には戻れない。助けも来ない。だから、ここで新しい苗床を作りましょう。フフフ、アハハハ!」
「はは、あはは……」
緑の目が怪しく光る2人、翠だったイロクイ人間は、何かと決別するかのようにツタを伸ばし、真畔だったココナッツ状の果肉を、果汁を貪り始める。
彼女たちは地底で新たな犠牲者を待ち続けることだろう……。

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