メディナにさらわれた色使い

「……んん、どこだろうここ」
 翠が目を覚ましたのは、明かりが一つだけついている、ただただ広い部屋だった。
 身体は包帯のようなもので巻かれ、身動きが取れない。そもそもどこかで拉致された覚えもないが、いったいなぜここにいるのだろうか。
「おぉ、目が覚めましたの」
 その正体がうすぼんやりと分かって来た。たぶんではあるが、このメイド服で褐色肌の女が何らかで拉致したのだろう。それだけわかればもう十分だった。

「どうするつもり? お金とかないよ」
「お金?そんなものはいりませんよ。腐るほどありますし」
「じゃあ何らかの要求?」
「うーん、それも要りませんねぇ……とぉ!」
 褐色肌の女性――メディナはそういうや水風船を翠の顔にぶつける。水風船が割れ、中に入っていた青い液体――青色の生命力を集めた、相手の気力を削ぐ一撃だ。
「っ、ごほっげほっ!」
 そして、翠の口から吐き出されたのは黒い液体。自らの生命力を貯めた、強烈な一撃を見舞うつもりだったのだろう。メディナはやれやれといった顔をする。
「やっぱり油断できませんねぇあなたは。そんなあなたになんと朗報。メディナさんが目的を教えてあげちゃいます」

「……」
 気力が削がれ、身体の疲れが出てきた翠は、返す言葉が出ない。それでもメディナは話し続ける。
「メディナはあなたを殺したり搾り取ったりはしません。つまらないですから。ただ、それ以上に面白い方法でお相手しますの」
 メディナが話していると、身体に巻かれている訪台が、じわじわと黒く変色し始め、やがてラバーのように光沢のある黒に変色する。体力をさらに奪われ、身体の締め付けがさらに増した気がする。
「ふふふ、ぴっちりと締まる特殊な包帯もいいですが、ここからが重要ですの」

 翠の気も知らず、メディナが話をつづけながら、後ろの暗がりから大型のタンクを用意する。中に詰まっているのは、黒い液体だ。
「これって……人工色?」
 翠たち色使いが武器として使う、人間固有の生命力がある。これを『色』という。対して人工色は固有の生命力を基に人工的に精製し、量産化した生体兵器――たとえ人工色を受けて死んでも『心臓が止まった』『自然毒を食した』程度しかわからず、誰もその死因が分からない。まさに悪魔の兵器だ。
「うーん正解。さすが翠ちゃん勉強もできますの。まぁこれを使って歪めて楽しむのが今回の主旨なんですけどね」
 そういうやメディナはバズーカ状の発射口を担ぎあげる。ターゲットはもちろん翠だ。
「せーのっ!」
 ドン、ドン、という音とともに胸に黒いインク塊があたり、ゴロゴロと転がる翠。衝撃に耐えかねたか、細かく息を吐いたり、せき込んだりする音が部屋の中に響き、ライトが黒髪の少女を追従する。

「さーて、翠ちゃーん、どうですか?」
 ゴロンと転がっている黒い物体に巻かれた少女は、苦しそうに、しかし不機嫌そうにメディナに向き直る。
「いたぶりたいのなら、別に」
「なるほどね。でもこれはどうかなぁ?」
 そういうや、メディナは翠の胸元をわしづかみにし、上下に動かす。すると、痛みが走り、翠の顔がゆがむ。
「うっ、いたい……!?」
「ようやく気付きましたが。翠ちゃんの胸も一撃でそこそこ大きくなりましたねぇ」
 Cカップほどの大きさになった翠の胸を激しくもみつかむメディナ。それに対し、翠は無言で体をねじり、抵抗する。
「おやおや、もっと『やめてくださいー!』とか言うと思ったけど、気が強いんですね。さすが黒の色使い」
「…………」
 メディナをにらみつける翠。こんな相手に変に抵抗すれば、かえって相手を喜ばせるだけ。悪く言えば単純で、バカな女。痛めつけたいだけならひたすらサンドバッグになって、かぎつけた零無に殺されればいい。そう思いながら翠は、メディナの凌辱をひたすら受け続けていた。

 だが、メディナはどこか満足したかのように翠の胸から手を離した。
「……満足?」
 皮肉交じりに翠はメディナに吐き捨てる。体の内側では胸の痛みもそうだが、ドクン、ドクンと包帯が脈打ち、色を吸い取っているため反撃が叶わない。こうなれば仲間が来るまで待つしかない。
「いやいや、翠ちゃんのほの暗さは大したものでメディナもニッコリですよ。しかしまだ満足じゃぁないんですよね。むしろここから本番と言ったところですの」
 そういうやメディナはアタッチメントを変える。平たいヒトデにも似た三叉状の物体は、インクのタンクと接続するとじわりと黒い液体をにじませる。
「ちょっと貼り付けますよー?」
 メディナが近寄り、翠の大きくなった胸に張り付けようとする。それに翠は抵抗するように体を背ける。
「強情ですねぇ」
 メディナが向きなおらせようとするも、翠は頑として受け入れようとしない。そんな様子にメディナの目から怒りがにじみ出る
「仕方ないですねぇ!」
「ぐぅっ!?」
 メディナは翠の首元をつかむと、翠の体を真正面に向け、魔力で宙に吊るす。
「ちょっと甘い顔をすればこうですから。時間稼ぎのつもりなんでしょうけど、メディナさんそんなことはとっくの前にお見通しですの」
「ぐ、うぅぅ」
 首元が苦しいのか、翠が苦しむ様子を見つつ、メディナは胸にできた黒い双房にアタッチメントを張り付けると、スイッチを入れるためか若干下がる。

「それじゃぁスイッチオン!」
 メディナがスイッチを入れると、翠の胸元にチクリと痛みが走り、じんわりと張ってくる。モーターの鈍い音とともに作動するインクタンクとアタッチメントは、翠の体に人工色を注入しているのだろう。そのせいか、胸元が、張ったように痛みを感じていく。
「く、くるしい……」
「苦しいですよねぇ、胸に色を流し込まれてどんどん大きくしていってるのですから」
 先ほどまでCカップ合った胸はDカップまで大きくなり、メディナはにやつく。そして、スイッチを握ったり離したりする。

「(あれさえ何とかすれば、勝てるみこみはあるかも?)」
 人工色のおかげか、色は徐々にではあるが貯められる状態になった。反撃するなら今しかない。翠は息を殺し、うなだれる。
「おやおや翠ちゃん。身体が耐え切れなくなったのです?」
「これでも、くらえ!」
 そういうや翠は口からメディナめがけて黒色を吹き出した。最後の抵抗、だが顔に当たれば多少の時間は稼げる。何よりメディナの短気っぷりを考えれば、こんな訳のわからないことなどやめて暴力に走るはず。

 そう考えていたのを見透かすように、メディナは素っ頓狂な声を上げた。
「あーっ、スイッチが最大になってしまいましたのー」
 その言葉とともに、翠の体に衝撃が走る。これまで徐々に注入されていた人工色が、一気に胸を通し、身体の中へ流れ込んできた。さらに、メディナが思いっきりタンクとアタッチメントをつなぐホースをつかむや、引っ張り上げる。その結果、翠の胸は餅を伸ばすかのように一気にDからIに肥大化した。
「あ、ああああああああっ!!!??」
 悲鳴を上げる翠。それでもメディナは引っ張るのをやめず、急速に伸びていく胸と伸びていくインク。胸は垂れることなく、インクが伸びた分を補って注がれパツンパツンに張ってはまた伸びていく。
「やめて、もどしてえええっ!!!」
 翠の悲鳴を無視するかのように元に戻ることはなく、ようやくメディナが体制を戻したころには、インクはほぼ空になり、風船のようにパツンパツンのQカップにまで成長していた。

「そして驚いて引っ張るのも無理もない話ですの。ふっふっふ、どうです?ことが全部裏目になった気持ちは。ねえねえ?」
 ぐぐっ、ぽんっ、と引っ張りぬくと、マシンについていた乳首と乳輪は、まるで丘に山ができたかのように肥大化し、化け物のような乳を形成していた。
「こんなの、見せられない……」
 冷静になればなるほど、おぞましく増殖した乳という現実と、自分の行いが裏目に出た事実を突きつけられ、めそめそと泣き出す。乳の重さは肩にのしかかり、宙づりにしてなければおそらく動けるかも危ういだろう。

「アハハハハ! そうそう、この顔が見たかったのですの。表情を殺している少女が表情をあらわにして泣く姿!もう達しますよえぇ」
 メディナはその姿に指をさし、笑うばかり。
「もう、殺して、殺せるのなら殺して……」
 翠は懇願するも、次第に目の前の視界がぼんやりと黒い霧に包まれていく。
「残念ですけどメディナは殺すために連れてきたわけじゃないですの。そして満足したから帰りますの。アデュー」
 包まれていく黒い霧、そして消えていくメディナの姿に、翠はただ呆然と立ち尽くすばかりだった。

「はっ」
 次に翠が気付いたのは、自分の家のベッドの上だった。
「夢……だった?」
 よくよく思い出してみれば、拉致された記憶がない。それにさらわれたのなら、大人の顔も覚えているはず。それが全く覚えていない。覚えているのは、かすかに浮かぶ褐色肌のメイド服の女。

「……とにかく、零無あたりに相談してみよう」
 そういい、翠は立ち上がろうとした。
 立ち上がれなかった。肩に赤ちゃんでものっかったかのようにずしりと重い感触がかかり、身体を無理に起こそうとしても、すぐに重力に引っ張られてしまった。

「うそ……でしょ?」
 翠は体を転がし、何とかベッドから出る。肩どころか足も重く、気を抜けば倒れてしまいそう。それでも確かめるべく、姿見の前に立つ。

 そこに移ったのは、Qカップにまで肥大化し、乳輪と乳頭が飛び出た、翠の姿だった。
「あ、あぁぁぁ……」
 これからどうすればいいのか、誰に相談すればいいのか。冷静になった翠の頭の中は、パニック状態に陥り、そして――意識を自ら閉ざした。


おまけ

「これで元に戻してくれるよね?」
 翠が着ているのは、いつも夏場に着ているスクール水着。ただし今の翠は胸が肥大化している姿。その状態でスクール水着を着ればどうなるか。
 翠の水着は肩ひもが引っ張られて胸の上部分がほとんど隠れず、胸元は浮きでて乳首が生地越しに丸見え状態だった。名前布も引っ張られ、ミシミシと音が鳴っている
「いやぁ、まさか着てくれるとは思ってませんでしたの。人って助けがあるとなんにでもすがるものですの」
「は、早く元に戻して。これ、結構辛いから」
 スクール水着がきついのもあるが、それ以上に恥ずかしくて死にそうな翠は、メディナに早く戻してほしいと懇願する。
「それじゃあ元に戻す――訳がないですの」
 メディナは時空をゆがめ、翠の周りだけ別の次元に変える。そこにいたのは…大勢の生徒の姿。メディナがゆがめた場所は、翠の通っている小学校のプール、それもプール開きで全員体操服姿の中に一人、痴態ともいえる格好で飛ばされたのだ。

「待って! ここだけはやめて、本当に、やめて。なんでもするから――」
 周りがざわめく中、メディナは空間を元に戻す。その顔は愉悦に満ちていた。

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