de_denneko

しろくろにっき

#15 色の撒かれた地へ

「なに、これ……」「なんだかこわい……」 帆布中央病院に足を踏み入れた翠ときらりの第一声は、恐怖と混乱の入り混じったものだった。 玄関口は様々な色をぶちまけたかのように飛び散ったり人の形をとっており、奥に行くにつれてそれが如実に増えていく。...
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#14 再会は歪んだ色を纏いて

「(なにか手はないのかな、ないのなら、いっそのこと……)」翠にとってきらりは唯一無二の友人だ。彼女を失うぐらいなら自分自身を失ってもいい。そんな思いを巡らせつつ、ゆっくり近づいてくるきらりに向き合居続ける。纏っているものも、表情も、行動もす...
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#13 白色を邪に染めて

帆布中央病院。そこは病院でありながら、人の気配が微塵も感じられなかった。あるのはあちこちに飛散した色と、人の形をした色水たまりの数々。シロクイの襲撃と地脈から噴出した色の直撃を受けたこの病院は、あるものは体が耐えきれずに肉体が消失したり、変...
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#12 色を成さない色

時は少し戻り、きらり一行が柱の破壊に向かった頃、紫亜とサン、そして零無は暴走する朱音――もとい健児と向かい合っていた。紫亜に組み付いた健児の力は鍛えている紫亜を持ってしても辛い。気を抜けば弾き飛ばされてしまうだろう。 「紫亜、できるだけこい...
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#11 邂逅、多色の鬼

「城奈ちゃん、なんとかできそう?」「大丈夫、これを引っこ抜いて…えいっ!」地脈に打ち込まれた杭はそこまで深いものではなく、子供の手でもあっさりと抜けた。城奈がその杭を壊すとあたりの空気が一瞬ぶれ、和らいでいく。「これでよし、きらりちゃん。紫...
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#10 色禍色災(しきかしきさい)

次の日、一行は布津之神社に集まっていた。翠が共闘にOKを出したため、紫亜によって集まる機会を設けることとなった。その初回が今日にあたる。「おはよーなのね!」「おはよう城奈、それに六宮さんと七瀬さんも」「おはよう……城奈だけ呼び捨て」「何かそ...
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#9 消えた色と街の彩り

今日は日曜日、翠はぼんやりとリビングのテレビを見つつ、用意されていた朝ごはんを食べていた。「今日のニュースはネットで話題のこのワンちゃん!」「……」「あの有名なパン屋が帆布センター街に出店!さっそく――」「……」「人々を石にするなんて、絶対...
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#8 隠された色

紫亜は翠ときらりを送ったのち、神殿に戻る。和室の近くにあり、神社の土地神であり色神――すなわち零無を祀まつる場所であり、彼女の寝室でもあった。「色神様、あれでいいんですよね?」「まぁ、あれでいいだろう。あぁいう他にない。思った以上に闇を抱え...
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#7 色のない獣と暴走する色

鎮守の森は布津之神社の裏に広がる広い森だ。どれだけ広いかというと、きらりいわく公園の森より広いと聞く。紫亜を先頭に翠達は報告を受けた変なイロクイを退治するため、鎮守の森へと足を踏み入れる。「ここにはおとなしいイロクイもひっそり生活していた―...
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#6 見し聞きし歴史の色

「で、この神社が今回の目的地……と?」「うんうん、今日はここの巫女さんがお話しするから翠ちゃんもどうかなって」「いやどうとか言われても……きらりが案内したところだしなぁ」翠ときらりが今来ているのは布津之ふつの神社。帆布市が「色淵」と「筆咲ふ...